不測の事態によって個人再生の返済が出来なくなった時

突然の病気や失業で「もう返済が続けられない」と思った時…

個人再生が無事に認められ、3〜5年間の返済をスタートしたものの、人生には予期せぬ不測の事態が起こることがあります。

  • 大病を患って長期入院することになり、働けなくなってしまった
  • 勤務先が突然倒産して、職を失ってしまった
  • リストラされてしまった

 

このように、「自分にはどうしようもない正当な理由」で収入が途絶え、これまでの返済が続けられなくなってしまうケースはゼロではありません。

 

これまで一生懸命に真面目に返済を続けてきたのに、突然の不幸で借金が返せなくなり、一括返済を求められるなんてことになれば、あまりに酷ですよね。

 

法律には、こうした限界まで追い詰められた方を救うために「ハードシップ免責」という最後の救済措置が用意されています。

今回は、この制度の中身と、万が一払えなくなったときの具体的な解決策を、アーク法律事務所の弁護士鬼頭が解説します。

 

ハードシップ免責とは? 残りの借金を「全額免除」する仕組み

ハードシップ免責とは、一言でいうと「あなたに落ち度がない不運な事情で、どうしても個人再生の返済が続けられなくなった場合に、残りの返済をすべてチャラ(免除)にする」という裁判所の制度です。

 

ただし、借金をさらに免除する手続きのため、利用するには以下の4つの厳しい条件をすべてクリアしている必要があります。一般の方には少し難しい法律の言葉を、分かりやすく噛み砕いて説明しますね。

 

① あなたのせいで払えなくなったわけではないこと(不可抗力)

「ギャンブルで使い込んだ」「なんとなく仕事を辞めた」という理由は絶対に認められません。

病気やケガ、会社の倒産、リストラなど、自分ではどうしようもない理由である必要があります。

 

② 返済総額の「4分の3(75%)以上」をすでに返し終えていること

これが一番高いハードルです。

例えば、3年(36回払い)の計画であれば、すでに27回目(2年3ヶ月分)までの返済を無事に終えているかどうかが境目になります。

 

③ 家や財産をすべて売る(自己破産する)よりも、債権者に多く返していること

専門的には「債権者の一般の利益に反しない」と言います。あなたがこれまでに返した総額が、もし自己破産をした場合に債権者へ配分されるはずの金額(清算価値)を上回っている必要があります。

 

④ 支払う期間を「延長」しても、どうしても払いきれないこと

実は、個人再生は事情があれば、返済期間を最長2年間「延長」してもらうことができます。

その延長を使ってもなお、どうしても完済が不可能なレベルで困窮している必要があります。

 

弁護士 鬼頭
このように救済措置と言っても、簡単に誰でも使えるようなものではなく、条件を満たすには非常にハードルが高いことがこの制度の大きなデメリットです。

 

住宅ローン特則(マイホーム)を利用していた場合の注意点

もし、マイホームを残すために「住宅ローン特則」を使って個人再生をしていた場合、ここにはもっと苦しい現実があります。

 

ハードシップ免責が認められると、一般の借金と一緒に「住宅ローンの残り」も免除の対象になります。

 

弁護士 鬼頭
借金が消えるのはありがたいことのように思えますが、ローンが免除されるということは、銀行(保証会社)が家を担保に取る権利(抵当権)を実行するということです。つまり、ハードシップ免責を使うと、大切な住宅は強制的に売却処分(没収)されてしまいます。

 

また、この免責を受けると、確定した日から7年間は「自己破産による借金の帳消し」が使えなくなるというペナルティもあるため、利用には慎重な判断が必要です。

 

「4分の3も返せていない…」そんな時のための解決策

この記事を読んでいる方の中には、「まだ返済を始めたばかりで、4分の3なんて到底届いていない…」と絶望を深めてしまっている方もいるかもしれません。

実は、ハードシップ免責の条件に届かない場合でも、解決する道は残っています。

1.再生計画の「期間延長」を申し立てる(マイホームを守れる!)

実は、個人再生の返済期間(原則3年)は、病気や失業などのやむを得ない事情があれば、裁判所に申し立てることで、最長5年(2年間の延長)まで引き延ばしてもらうことができます。

 

全体の返済総額そのものは減りませんが、返済期間が延びる分、「毎月の支払額を下げる」ことができます。

 

「完全に収入がゼロになったわけではないけれど、今の月々の支払額のままだと生活が回らない…」という場合、この方法ならマイホームを手放すことなく、生活を立て直すことが可能です。

 

ただし、以下の点に注意が必要です!

この期間延長は、単に「最近生活が苦しいから」という理由だけで簡単に認められるものではありません。

引き延ばしを認めるかどうか、裁判所が債権者(お金を貸している会社)の意見を聴取したり、場合によっては書面での決議を行ったりするため、必ず通るわけではない厳しい手続きでもあります。

裁判所や債権者を納得させるだけの「正当な理由」をしっかりと書類で証明する必要があるため、まずは弁護士への相談が必須となります。

 

2.自己破産への切り替えの検討

返済が始まってから日が浅い段階で行き詰まってしまった場合は、個人再生を一度あきらめて、「自己破産」を申し立て直すという方法が最も現実的で、実際にもよく使われる解決策です。

 

個人再生の時点では「どうしても仕事や家を守りたい」と破産を避けたとしても、病気や失業で収入そのものがなくなってしまったのであれば、裁判所も「それなら自己破産で借金をすべてゼロにして、まずは生活を立て直そう」と、スムーズに免責(帳消し)を認めてくれるケースが大半です。

 

弁護士 鬼頭
解決策があると言っても、簡単にそれをしようと思えることではないと思います。だからこそ、あなたの状況でどのような道を選択するべきかは、メリット・デメリットを含めて弁護士と一緒に考えることが不可欠です。

 

【注意】一番やってはいけないのは「だまって滞納すること」

病気や失業でパニックになり、どこにも相談できずに「ただ毎月の振込を止めてしまう(滞納する)」のだけは、絶対に避けてください。

 

連絡なしに支払いを滞納してしまうと、債権者から裁判を起こされ、最終的には再生計画そのものが強制的に取り消されてしまいます。

 

そうなると、減額してもらう前の「元の莫大な借金」に逆戻りし、一気に一括請求されてしまうという最悪の事態を招いてしまうので、動けなくなる前に、まずは一度、担当した弁護士にすぐご連絡ください。

 

弁護士 鬼頭
担当弁護士は、あなたの今の体調や収入の状況をお聞きした上で、「期間を最長2年延ばして今の計画のまま乗り切るか」「ハードシップ免責を申し立てるか」、あるいは「自己破産へ切り替えて完全に身軽になるか」、どれがあなたにとって一番傷が浅く済む方法を一緒に考えてくれるはずです。

 

まとめ|険しい道にしか見えない時こそ、弁護士を頼ってください。

個人再生の途中で返済ができなくなってしまったとき、現状を乗り切るための法律上の手続きは、ここまで説明した通りいくつか用意されています。

しかし、実際にどの道を進むかを選ぶのは、あなたにとって「簡単に決めることのできない、本当に難しい選択」だと思います。

 

  • せっかく家を守るために個人再生をしたのに、期間を延ばしても最後まで払い切れるだろうか
  • やっぱり、すべてを諦めて自己破産するしかないのだろうか…

そんな風に感じるものだからこそ、弁護士と一緒に解決策をもう一度探してみましょう。

 

3〜5年という長い返済期間のあいだに、人生の不測の事態が起きてしまうのは、決してあなたのせいではありません。これまできちんと返済を続けてこられたからこそ、今の状況は本当に悔しく、苦しいものだと思います。

 

ですから、どの方法が正しいのか、ひとりで答えを出そうと悩む必要はまったくありません。裁判所や債権者を納得させるための難しい書類集めや交渉は、すべて私たち弁護士の仕事です。

 

今、どれだけ厳しい状況に置かれていたとしても、あなたの人生の解決策は必ずあります。

どんなに難しい選択であっても、私たちはあなたの味方として、これからの生活が一番傷が浅く、もう一度前を向ける方法をじっくりと時間をかけて一緒に考えます。どうかひとりで抱え込まずに、その苦しい胸の内を、そのままお聞かせください。あなたは一人ではありません。

 

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