「契約者貸付」があっても、生命保険は守れる?
借金の返済に困ったとき、多くの方が利用されているのが、生命保険の「契約者貸付(けいやくしゃかしつけ)」という制度です。
解約返戻金(解約した戻ってくるお金)の8割程度までなら審査なしで、金利も消費者金融より安く、ネットから申請すれば早ければ当日に振り込まれるため、とても便利な仕組みですよね。そのため、弁護士にご相談に来られる方の多くが、すでにこの制度を限界まで利用されているケースがよくあります。
ここで皆さんが一番不安に思うのが、「自己破産や個人再生をしたら、この契約者貸付も『借金』として扱われて、保険会社にバレて強制解約になっちゃうの?」ということです。
結論から言うと、契約者貸付があっても、それが原因で保険会社から強制解約されることはありません。
今回は、不思議な仕組みである「契約者貸付」が債務整理でどう扱われるのか、アーク法律事務所の弁護士鬼頭が分かりやすく丁寧に解説します。
<なぜ?>契約者貸付は「借金(債権者)」として扱われません
「貸付」という名前がついている以上、これも借金の一種のように思えますよね。しかし、法律や実務の世界では、これは借金ではなく「解約返戻金の一部前払い(払い戻し)」として取り扱われます。
あなた自身が将来受け取るはずのお金を、ちょっと先取りして使っているだけ、というイメージです。そのため、自己破産や個人再生をする際にも、以下のような扱いになります。
- 保険会社へ「受任通知(手続き開始の連絡)」は送りません
- 債権者一覧表に「借金」として記載することもありません
保険会社からすれば、あなたにお金を貸してリスクを負っているわけではない(返ってこなければ将来の保険金や返戻金から差し引けばいいだけ)ので、債務整理を始めたからといって、保険会社から「契約を解約します」と言われることはないのです。
まずは安心していただいて大丈夫です。
【自己破産・個人再生】裁判所での「あなたの財産」としての数え方
保険が解約されないと分かってホッとした方も多いと思いますが、もう一つ気になるのが「じゃあ、裁判所には財産としてどう報告するの?」という点ですよね。
自己破産や個人再生では、あなたの今の財産価値を調べるために、保険会社から「解約返戻金見込額証明書」という書類を取り寄せて裁判所に提出する必要があります。
契約者貸付がある場合、裁判所での財産の数え方は「引き算(相殺)」で計算します。
裁判所での計算イメージ
・本来の解約返戻金の額:100万円
・契約者貸付の借入額:80万円
・裁判所がみる「あなたの財産価値」= 20万円
自己破産の場合、この「差し引いた残りの額」が20万円以下であれば、財産として没収されることなく、保険をそのまま維持できる可能性が極めて高くなります。
つまり、限界まで契約者貸付を使っている人ほど、「手元の財産価値が低い」とみなされるため、保険を残しやすくなるという側面があります。
【注意】手続き直前の「駆け込み利用」は絶対にNG!
ここまで読むと「じゃあ、破産する前に契約者貸付で限界までお金を引き出しておいた方が得じゃない?」と思ってしまうかもしれませんが、これは絶対にやってはいけない危険な行為です。
弁護士に依頼する直前や、裁判所に申し立てをする直前に「生活費が足りないから」「手続き費用にしたいから」と契約者貸付を利用すると、裁判所から「財産隠し」や「不当な財産減少行為(免責不許可事由)」と疑われてしまうリスクがあります。
お金の流れは、過去の通帳の履歴などから必ず裁判所に把握されます。
まとめ|ひとりで悩まず弁護士に相談をしてください
「貸付」という言葉のイメージに振り回されて、「大切な保険を手放さなきゃいけないんだ…」と一人で抱え込んでしまうことはありません。
生命保険や学資保険は、万が一の備えや、お子さんの将来のための大切なお守りですよね。契約者貸付があっても、正しく実務のルールに則って進めれば、保険を解約せずに借金問題だけを綺麗に解決する道は十分にあります。
ただし、裁判所に提出する「解約返戻金見込額証明書」の手配や、残った価値の正しい計算には少しコツが必要です。
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