まとまったお金ができたから、一気に返済したい!
個人再生の手続きが無事に終わり、裁判所に認められた計画(再生計画)に沿って毎月コツコツと返済を続けている毎日。 そんな中、遺産相続や宝くじ、あるいは収入が上がったことで「まとまったお金」が手に入ることがあります。
「お金があるなら、一気に全額支払って早くスッキリしたい!」と思うのは、ごく自然なことですよね。
結論から言うと、個人再生の認可が確定した後に、すべての債権者に対して一括で繰り上げ返済をして払い切ってしまうことは「可能」です。
ただし、個人再生というデリケートな手続きだからこそ、「良かれと思ってやった行為が、一発で最悪の事態を招く落とし穴」も潜んでいます。
今回は、繰上一括弁済のコツと絶対に知っておくべき注意点を、アーク法律事務所の弁護士鬼頭が分かりやすく解説します。
認可確定後の一括返済で必ず守るべき「2つの絶対ルール」
「お金があるから今すぐ振り込もう」と焦る前に、まずは個人再生ならではの重要なルールをチェックしましょう
ルール①|一部の会社だけ先に返すのは絶対にNG!(債権者平等の原則)
「余裕があるから、まずは金利が気になるところや、1社か2社だけでも払い切って件数を減らしたい」と考える方が非常に多いのですが、これは絶対にやってはいけません。
個人再生には、すべての債権者を一律で平等に扱わなければならないという「債権者平等の原則」という法律の決まりがあります。
ルール②|弁済開始直後(半年以内)の返済は「不誠実」だと怪しまれるリスクも
早くお金を返してもらって嫌がる会社はないはず、と思うかもしれません。しかし、ここはとても慎重になるべきポイントです。
そもそも個人再生という手続きは、会社側に「本来返ってくるはずだったお金を、1/5〜1/10にまで大幅に減額してもらう」という、相手に大きな痛みを飲んでもらうことで成り立っています。
債権者側があなたの再生(やり直し)を応援するために、大損を覚悟で認めてくれたものであることを思い出してください。
それなのに、計画がスタートしてすぐ(目安として半年以内)に「一括で払います!」とまとまったお金を出してしまうと、相手はどう思うでしょうか?
「そんなにお金があるなら、最初からもっと多く返してほしかった」「本当は手続き中から財産を隠し持っていたんじゃないか?」と、不信感を抱かれてしまうのは当然ですよね。
せっかく認めてもらった手続きを台無しにしないためにも、一括返済を行うにあたっては、
- 仕事の手当や収入が上がった
- 親から遺産を相続した
- 宝くじが当たった など
【注意】もしも、一部の会社だけに一括返済した場合に起こること
「バレなければ、1社だけ先に返しちゃってもいいでしょ?」と思うかもしれませんが、もし内緒で一部の会社だけに繰り上げ返済をしてしまうと、その後に不測の事態が起きたとき、以下のような取り返しのつかない大損害を受けることになります。
リスクA:「ハードシップ免責」が使えなくなる
再生計画の途中で、あなたの責任ではない理由(突然の病気や会社の倒産など)でどうしても返済が続けられなくなった場合、一定の条件を満たしていれば、残りの返済を免除してもらえる「ハードシップ免責」という救済制度があります。
しかし、過去に一部の会社だけに身内びいきの返済(繰り上げ返済)をしていた事実があると、この素晴らしい救済措置が一切認められなくなってしまいます。
リスクB:自己破産すら認められなくなる(偏頗行為否認)
もし返済が行き詰まり、最終手段として「自己破産」を選び直すことになった場合、一部の会社だけに先に返済していた行為は「偏頗行為(へんぱこうい:特定の誰かだけを優遇する違法な返済)」とみなされます。
最悪の場合、自己破産をしても借金の帳消し(免責)が認められないという、文字通り逃げ道が完全に塞がれた最悪の結果になってしまうのです。
【おまけ】申し立て前・手続き中にまとまったお金が入った場合は?
今回は「認可が確定した後」のお話をメインにしていますが、もし「裁判所に申し立てをする前」や「手続きの途中」でまとまったお金(全額返せるレベルの臨時収入)が入った場合は、扱いが異なります。
全額(元の借金総額)を支払える場合
速やかに弁護士に連絡し、個人再生の申し立てを取り下げて、各会社に全額を完済するルートに切り替えます。
全額には足りない臨時収入の場合
入ってきたお金は「清算価値(あなたの財産)」として裁判所に計上されます。個人再生では「最低弁済額」と「清算価値」を比べて高い方を返済するルールがあるため、毎月の返済額の基準が上がることになります。
まとめ|一括返済に迷ったら、まずは担当弁護士に相談を!
臨時収入があったり、生活に余裕ができて「早く借金を終わらせたい!」と前を向けるのは本当に素晴らしいことです。
しかし、個人再生はゴールした後も法律のルールが厳しく絡んでくることを忘れないでください。
繰上一括返済を安全に進めるための具体的なコツは、事前に各債権者に連絡をして「残りいくらを、いつまでに一括で支払うか」の正確な約束を全社と交わす必要があります。
ですが、個人で何社もの金融機関とこのシミュレーションや調整を行うのは、正直とても大変ですし、一歩間違えると先ほど説明した大きなリスクに繋がってしまいます。
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