個人再生の手続きが始まると、生活はどうなる?
裁判所に申し立てをして、借金を大幅に減額してもらう「個人再生」
いざ手続きが進むとなると、「明日からの生活にどんな制限がかかるんだろう?」「車やマイホーム、スマホはどうなる?」と不安を抱えている方は非常に多いです。
結論から言うと、個人再生は自己破産よりも、日常生活や財産への制限が緩いのが特徴です。また、会社をクビになったり、戸籍に載ったりするようなデマはすべて嘘ですので安心してください。
ただし、裁判所が関わる公的な手続きだからこそ、「期間中にやってしまうと、一発で手続きが失敗(不認可)になるNG行為」は明確に存在します。
今回は、個人再生の申請中の生活はどう変わるのか、絶対に破ってはいけないルールをアーク法律事務所の弁護士鬼頭が分かりやすく解説します。
個人再生の手続き中に起きる「生活制限」の真実
まずは、自己破産と比べたときの「生活の自由度」について正しく知りましょう。
引越しや旅行について
自己破産(管財事件)のように「裁判所の許可がないと絶対に旅行や引越しをしてはならない」という法律上の強い強制制限は原則ありません。
ただし、個人再生の手続き中に住まいが変わったり、大きな出費を伴う旅行をしたりすることは、裁判所や個人再生委員(手続きを監督する人)への報告や説明が必要になります。そして、そのお金の使い方が妥当であるかが、手続きの軍配を分けます。
郵便物について
あなた宛ての郵便物が誰かに勝手に開封されたり、どこかに転送されたりすることはありません。通常通りご自宅に届きます。
財産の管理について
自己破産のように「財産の処分権がすべて管財人に移る」ということはなく、ご自身の財産は手元で管理できます。
だからといって、手続き中に車や不動産などの財産を「勝手に売却・処分」することは絶対にやってはいけません。
財産の価値がいくらあるかは返済額を決める重要な基準(清算価値)になるため、勝手な処分は「財産隠し」と疑われ、手続きが打ち切られる原因になります。
個人再生の手続き中に「絶対にやってはいけない4つのNG行為」
個人再生の手続き中(弁護士に依頼してから、裁判所で再生計画が認められるまでの間)に以下の行為を行うと、「減額を認めない」という最悪のペナルティ(再生計画の不認可)を受け、手続きが失敗に終わってしまいます。絶対に守ってください。
❌ ① 後払い決済(キャリア決済・後払いアプリなど)
「今お金がないから、来月の携帯代と一緒に払おう」「後払いアプリで買い物しよう」は絶対にNGです。
法律上、後払いはすべて「新しい借金」とみなされます。
せっかく借金を減らす手続きをしている最中に、新しい借金を作ってしまうのは言語道断。買い物は「現金」か「その場で口座から引き落とされるデビットカード」に徹底してください。
❌ ② 新たな借り入れ(身内や友人からの個人間含む)
生活費が足りないから」と消費者金融から借りるのがNGなのは当然ですが、「親や友人から借りる」のも厳禁です。
個人再生は「すべての債権者を平等に扱わなければならない(債権者平等の原則)」という大ルールがあります。
誰かからお金を借りる行為はそのルールを破ることになるため、手続きがストップしてしまいます。(※返さなくていい、家族からの純粋な「生活費の援助」であれば問題ありません)
❌ ③ ギャンブルや投資(パチンコ・競馬・FX・仮想通貨など)
手続き中は、無駄な支出を避け、収入の中でやりくりできることを証明していかなくてはなりません。
また、裁判所に1円単位で「家計収支表(家計簿)」を提出します。お金の使い道に嘘や誤魔化しは通用しません。 ギャンブルや投資の履歴、使途不明金があれば裁判所に必ずバレます。
裁判所に「この人は本当に反省して、これから3年間誠実に返済していけるのだろうか?」と思われてしまえば、その時点で手続きは失敗に終わります。
❌ ④ 財産の勝手な処分・特定の場所への「身内びいき」の返済
「車を没収されたくないから、内緒で名義を友達に変えておこう」「お世話になった先輩にだけは、手続き前にこっそりお金を返しておこう」といった行為は、財産隠しや特定の債権者だけを優遇する「偏頗弁済(へんぱべんさい)」という違法行為になります。
発覚すれば、裁判所からの信頼を失い、個人再生は不認可になります。
個人再生の手続き中に「気をつけるべきポイント」
やってはいけないNG行為のほかに、手続きをスムーズに進めるために意識しておきたいポイントです。
毎月の「積立(履行テスト)」を怠らないこと
個人再生が始まると、裁判所から「今後決まった金額を毎月きっちり払っていけるか」を確認するために、指定の口座へ毎月一定額を積み立てる指示(履行テスト)が出されます。
この支払いを1回でも遅れたり忘れたりすると、「返済能力なし」と判断されて手続きが失敗します。毎月の最優先事項として、期日までに弁護士に指定された口座に必ず入金してください。
家計収支表は「1円の狂いもなく」つけること
毎月の家計簿の提出は、あなたの誠実さを示す大切な証拠書類です。
帳尻が合わない数字や使途不明金を出さないよう、レシートは必ず保管し、毎日コツコツ記録する習慣をつけましょう。
迷ったら弁護士に相談しよう!
・これって、買ってもいいのかな?
・これは、やってもいいのかな?
そう思ったら、担当の弁護士に相談するということを忘れないでください。
どんなに些細なことでも大丈夫です。手続きを成功へ導くためにも、自己判断せず、弁護士にご相談ください。
手続き検討中に起きやすい15の疑問
自己破産のQ&Aと共通する部分もありますが、個人再生ならではの「財産を残せるメリット」を交えながらお答えします!
周囲への影響・プライバシーの疑問
① 個人再生をしても戸籍や住民票に記載されることはない
周囲に知られたくないと思うのは当然の心理ですが、戸籍や住民票に載ることは絶対にありません。手続き中に役所の「身分証明書」に記載されることもないので、日常生活への影響はゼロです。
② 会社にバレても、解雇事由(クビ)にはあたらない
給料の差し押さえを受けていたり、勤務先から直接借り入れをしている場合は会社にバレてしまいます。しかし、それを理由に会社があなたを解雇することは法律上できません。
③ 就職や転職への影響は?
基本的に影響はありません。国の発行する「官報」という新聞に氏名が載りますが、一般の企業が日常的にチェックしているものではありません。万が一、採用時に影響があったとしても「縁がなかったんだ」と気軽に受け止めておきましょう。
④ 選挙権はなくならないし、地域住民にもバレない
「選挙権がなくなる」というのは100%デマです。
また、近所の人に個人再生の事実がバレることも、官報を偶然見かけられない限りありません。
⑤ パスポート取得や海外渡航に制限はない
個人再生では、自己破産のような手続き中の居住制限(引越しや旅行の許可制)が原則ありません。パスポートの取得も通常通りできますし、海外への出国も完全に自由です。
⑥ 家族への影響は、他の人でまかなえれば問題ない
家族への影響はほとんどありません。借金の返済義務はあくまで名義人か保証人のみです。
ブラックリストに登録されている期間、あなた名義でローンやクレカの主契約にはなれませんが、家族名義の契約(家族カードなど)でまかなえれば問題なく生活できます。
※お子さんの奨学金は機関保証を利用すれば、問題なく借りられます。
生活・財産に関する疑問
⑦ ブラックリストに登録されることになる
弁護士が受任通知を発送した段階(または2〜3ヶ月以上の滞納時点)で登録されます。期間は5〜10年で、その間は新たなローンやクレカが作れず、保証人にもなれません。
⑧ 個人再生をしても「これまで通りの生活」を送る方法はある
クレカが使えなくても、現金払い、事前入金型の電子マネー、即時引き落としのデビットカード等を利用すれば、不自由なく生活できます。
子供の奨学金等の保証人になれない場合も、最近は「機関保証」を使うケースが増えているため焦らなくて大丈夫です。
⑨ 家財道具は一切処分されない
自己破産とは異なり、個人再生は「財産を処分されない手続き」です。
高価な家財道具であっても、清算価値として計上する必要があっても、没収される心配は一切ありませんので安心してください。
その他のあなた名義の財産も同様です。
⑩ 生命保険や学資保険も、解約する必要はない
保険を解約する必要はありません。
ただし、いま解約したらいくら戻ってくるかという「解約返戻金(かいやくへんれいきん)の評価額」は、あなたの財産(清算価値)としてカウントされ、毎月の返済額に影響を与える場合があるため、事前にチェクが必要です。
⑪ マイホーム(住宅ローン)を残せるのが、個人再生最大のメリット
「住宅資金特別条項(住宅ローン特則)」という制度を利用すれば、マイホームを手放さずに、その他の借金だけを大幅に減額することができます。
ただし、住宅ローンは、従前どおり支払っていく必要があります。
⑫ ローンの残っている車やスマホはどうなる?
分割払いの商品は「所有権留保(誰に所有権があるのか)」がポイントです。
もし、所有権があなたにはなく、債権者側にあるのであれば、債権者の意向があれば、その商品は引き揚げ対象になります。
ただし、軽貨物やタクシーなど「仕事に絶対必要な車」であれば、特例(別除権協定)で残せる可能性があります。
⑬ ペットや子供の習い事はどうなる?
ペットが引き揚げられることはありません。
子供の習い事も、借金をストップした状態の家計簿(家計収支表)が黒字であり、今後の返済に支障が出ない範囲であれば、そのまま続けさせてあげることができます。
お金・法律の疑問
⑭ 養育費の支払い義務は、個人再生をしても減額されない
養育費は「子供の権利」であるため、個人再生の手続きをしてもカットの対象にはならず、今後も全額支払う必要があります。
ただし、どうしても生活が苦しい場合は、別途「減額調停」を裁判所に起こすことは可能です。
⑮ 税金の支払い義務は絶対に減額されない
住民税や自動車税などの税金は、どんなに困窮していても個人再生で減額することはできません。
滞納がある場合は、役所の担当窓口に相談し、別途分割払いの計画を立てて支払っていくことになります。
まとめ|賢く仕組みを使って、生活再建していこう!
個人再生の手続き期間中は、家計簿の提出や毎月の積立など、少し背筋が伸びるような生活が続きます。
しかし、これはあなたが数ヶ月後に「無理のない金額で、再スタートを切る」ための大切な準備期間です。
個人再生は、自己破産に比べて自由度が高い分、「これくらいなら大丈夫だろう」という甘えから後払い決済や使途不明金を出してしまい、自分で首を絞めてしまうケースがたまに見受けられます。
「この買い物はしても大丈夫?」「急な出費でお金が足りなくなりそう…」と迷ったときは、ひとりで悩んで間違った行動をしてしまう前に、いつでもアーク法律事務所にご相談ください。
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