偏頗弁済(特定の債権者だけに優先的に返済する行為)は、一見問題解決に見えるかもしれませんが、破産や債務整理手続きにおいてはリスクが伴います。
本記事では、偏頗弁済のリスクや注意点、合法的で安心な債務整理の方法をわかりやすく解説します。適切な対処で将来の負担を軽減し、安心して債務整理を進めましょう。
偏頗弁済とは?その意味とリスク
偏頗弁済について知らないまま進めると、後々不利な状況に追い込まれる可能性があります。
ここでは偏頗弁済の基本的な意味と、それが持つ法的リスクについて解説します。
偏頗弁済の定義
偏頗弁済(へんぱべんさい)とは、他の債権者に公平な配分をせず、特定の債権者にだけ返済を優先する行為です。
一般的には、破産手続きや個人再生を始める前に行われると、法的に「不公正な扱い」として問題視されることがあります。
偏頗弁済が発生するケースには、家族や知人からの借入金や、利息が高い貸金業者への優先返済が含まれ、特定の債権者にだけ返済したい心理が強く影響します。
しかし、これが法律上の公平性に反する行為として見なされると、破産手続きや個人再生手続きに影響を及ぼす可能性が出てきます。
例えば、あなたの借金が総額で300万円あり、自己破産を選択したとします。
消費者金融Aから100万円、消費者金融Bから100万円、両親から100万円借りていたとしましょう。
<ケース1>
両親には少しでも早く返したいと思い、受任通知でストップした借金の支払いにも関わらず、両親にはこれまでと変わらず、5万円支払ってしまった。
これが偏頗弁済です。
他の債権者は、1円も支払ってもらえないに、特定の債権者だけが支払いを受け、債権者の平等が失われます。
この場合、両親は、管財人から支払われたお金を回収されて、財団から正式に配当することになるので、両親は5万円よりも少ない金額しか受け取れなくなります。
<ケース2>
両親には少しでも早く返したいと思い、15万円の臨時収入が入ったので、それぞれに各5万円ずつ返したとします。
すべてが同一条件ということは、まずあり得ません。
借入時期、利息、遅延損害金、1回あたりの返済金額など、それぞれ違っているはずなので、これも偏波弁済となります。
手続き中に返済することは、このように問題として取り上げられます。
法を欺こうとすれば、バレた時にあなたが不利になるのは言うまでもありません。
偏頗弁済のリスク
偏頗弁済は破産法の観点から「詐害行為」として扱われるリスクがあり、破産管財人が返済の無効を主張し、返済した金額が破産財団に返還されるケースがあります。
特に、破産申請前の数か月以内に行われた大きな返済は、管財人によって厳密に調査されやすいため、「せっかく返済したのに再度支払わなければならない」という状況に陥るリスクがあります。
さらに、この偏頗弁済が認定されると、破産手続きにおける免責が認められない可能性もあるため、非常に注意が必要です。
債務整理全体における偏頗弁済の位置づけ
債務整理の全過程において、偏頗弁済を避けることは、他の債権者との公平な関係を保つために重要です。
借金問題を抱える人の心理として、精神的な重荷から逃れるために偏った返済を行いたい気持ちになることもありますが、最終的な解決策を模索する上で、偏頗弁済は一時的な救済にはならない点を理解することが大切です。
各債権者との平等な取り扱いを維持しながら、専門家の指導のもとで、計画的に手続きを進めることが安心であり、偏頗弁済によるリスクを回避するための賢明な方法といえます。
相談の重要性
偏頗弁済のリスクを避けるためには、債務整理に詳しい弁護士と早期に相談することが不可欠です。
偏頗弁済についての認識が浅いまま進めると、後から深刻な問題を引き起こすこともあります。
弁護士は、債務の状況や債権者との関係性を考慮しながら、適切な手続きを提案できるため、安心して進めるための信頼できるパートナーとなります。
なぜ偏頗弁済をしたくなるのか?借金に悩む心理と対策
偏頗弁済を選びたくなる背景には、心理的なプレッシャーが影響しています。
ここでは、借金の悩みからくる心理と、それに対する安全な解決策について解説します。
偏頗弁済を選びたくなる理由と心理的な圧力
借金を抱えた状況では、多くの人が精神的なプレッシャーや、返済先を「少しでも減らしたい」という切迫感を抱えています。
特に、親しい人(親や友人など)や信頼している債権者にだけは早く返済したいという気持ちは自然なものです。
感謝や恩義、または経済的な重圧を感じる相手への返済を優先することで「罪悪感」から解放されたいと考える傾向もあります。
また、「とりあえず特定の債務だけ解決すれば気が楽になる」という一時的な解放感を求め、偏った返済を選択しがちです。しかしこの一時的な返済は、全体の債務解決において長期的には不利に働く可能性が高いことを認識する必要があります。
偏頗弁済が引き起こすリスクと長期的な影響
一部の債権者だけに返済を優先すると、他の債権者からの信頼が損なわれ、追加の利息や手数料が発生するケースもあります。
また、破産手続き中に偏頗弁済が発覚した場合、その返済行為が無効化されるだけでなく、破産手続きそのものが複雑化するリスクもあります。免責が得られにくくなる可能性もあり、結果的に生活再建がさらに困難になるかもしれません。
偏頗弁済は、「その場しのぎ」の返済に過ぎず、長期的な解決策を求める上では必ずしも賢明な選択とは言えません。
偏頗弁済を避けるための具体的な対策
偏頗弁済の誘惑を抑え、全体的な解決を目指すには、冷静な判断が求められます。
弁護士との早期相談が不可欠であり、すべての債務に対して平等かつ公正な対応を図るための支援が受けられます。
弁護士は各債権者との交渉を通じて、個別の返済優先によるリスクを最小限に抑える適切な方法を提案できます。
自分だけで決めてしまう前に、全体の返済計画や債務整理手続きのメリット・デメリットを理解し、最も負担の少ない解決策を見つけることが、安心して債務問題を解消するための鍵となります。
弁護士に相談することで得られる安心感と公平性
偏頗弁済に陥ることなく、計画的かつ持続的な債務整理を実現するためには、経験豊富な弁護士のアドバイスが非常に有益です。
弁護士のアドバイスを受けることで、自分では気づけなかった返済方法や法的な選択肢が見えてきます。
公平な解決を目指すプロセスの中で、感情的な衝動に左右されず、冷静な対応ができる環境を作ることが可能です。これにより、最終的な負担が軽減され、持続的な生活再建への一歩を踏み出すことができます。
偏頗弁済がバレる可能性とリスクを避ける方法
偏頗弁済を行うと、破産手続きの際に問題が発覚するリスクが高まります。
ここでは、偏頗弁済がどのように発覚するか、そのリスクを避けるための具体的な方法について説明します。
偏頗弁済が発覚する可能性
偏頗弁済(特定の債権者への優先返済)は、破産手続きや個人再生の手続きの過程で、債務の履歴(金銭のやり取りを証明する家計収支表)が確認される際に発覚するリスクがあります。
すべての債権者に対して提出する必要がある返済履歴や口座明細から、偏った返済が見抜かれることが多いため、専門家による慎重な判断とアドバイスが欠かせません。
発覚した場合のリスクとその影響
偏頗弁済がバレると、返済が無効化されるだけでなく、破産や整理手続きにおいて不利な評価を受ける可能性があります。
たとえば、免責許可に該当する場合があるほか、他の債権者との信頼関係が崩れ、将来的な交渉が難航することにもつながります。さらに、手続きそのものが中断されたり、再審査を余儀なくされる可能性があり、結果的に問題が長引くリスクを抱えることになります。
リスクを避けるための方法とプロのサポートの重要性
偏頗弁済が発覚するリスクを最小限にするためには、債務整理手続きのすべてを法律の専門家と一緒に進めることが重要です。
弁護士は、各債権者に対して平等な対応をするための計画を策定し、債権者側との交渉においても適切なサポートを提供できます。偏った返済への対処の仕方には、最適なアドバイスを受けることが安心な解決策につながります。
債務整理後、家族や友人に支払う行為は偏頗弁済ではありません。
破産手続き、個人再生手続きの最中に特定の債権者に支払う行為はダメだと書きました。
では、手続き終了後ならばどうなるのでしょうか?
答えは、問題なく支払うことができます。
あなたの支払いたいという意思は、たとえ、自己破産で借金が帳消しになったとしても大切に扱われるものであり、手続き終了後であれば、可能な範囲で支払っても問題になることはありません。
ですが、ここにもまだ注意点があります。
確かに、任意な思いで支払う行為は問題ありません。
ですが、手続き中に
「手続きが終わったら返します」
という約束をすることも禁じられています。
ここでも、他の債権者との平等性について問われることになります。
破産手続き、個人再生手続きの終了後、
返済していく意思があるのならば、債権者である家族や知人と話し合った上で返済していきましょう。
手続き中には、家族や知人に返済について問われた時には、債務整理を選択しなければならなくなった理由を真摯に話すことが大切です。
この際に、返済の約束をしてしまいそうになりますが、確定的な言葉を伝えてはいけません。
「いつか、恩返しできるようにしたいと思っています」
のように曖昧な言葉にとどめておきましょう。
【まとめ】あなたの「いつかちゃんと返済したい」という気持ちを家族や友人に素直に伝えることが大切
言葉の制約を受ける部分がありますが、あなたが悩むのは、相手を裏切りたくないからですよね。
でも、どうしようもなくなってしまった金銭状況ではどうすることもできないのですから仕方がありません。
開き直ってしまったり、逆に横柄な態度を取ったりせず、返済したいという気持ちがあるのなら、真摯にこれまでの経緯を伝えて謝りましょう。
そして、手続きが終わった後に、あなたの無理のない範囲で、返済していきましょう。
■偏頗弁済は債務整理でリスクが高く、発覚すると手続きが無効になることがあります。
■借金返済のバランスを保ち、適切な手続きを進めるためには、専門家のサポートが重要です。
■弁護士に相談することで、公正な解決策を見つけ、不安なく手続きを進めることができます。
■自己破産で借金が帳消しになっても、支払いたい借金は支払うことができます。
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