「債務整理」という言葉も、「個人再生」という言葉も、あまり聞いたことがないという人は多いのではないでしょうか?
借金をどうにかしようと考えると浮かぶのは、「自己破産」だったりしませんか?
最近は「任意整理」をご存じな方も増えましたが、債務整理の概要をおさらいしましょう!
債務整理には、3つの種類があります。
- 任意整理(将来利息のカット)
- 個人再生(総額を1/5~1/10に減額)
- 自己破産(借金の帳消し)
この中の「個人再生」が、今日のテーマです。
個人再生は、借金を大幅に減額できて、実際に財産の処分はしないという特徴があります。
<個人再生が向いている人>
・住宅ローンを残したい人
・財産を処分されたくない人
ちょっと、複雑な部分も多いですが、わかりやすく説明します。
個人再生(個人民事再生)とはどんなもの?わかりやすく解説します!
元々は、民事再生手続きという、それなりの規模の事業者に対して設けられていたものでしたが、個人や小規模の事業者でも使えるようにと簡易化したものです。
個人再生をする6つのメリットとは?
個人再生とは何?ということも、わかったところで、この手続きを行うメリットをお話します。
- 弁護士の受任通知で取り立てがストップ
- 債権者からの強制執行を停止
- 借金総額の大幅な減額が可能
- 職業の制限がないこと
- 借金の理由に制限がない
- 家や車を残せる可能性がある
大きなメリットが6つも揃っています。
借金総額の大幅な減額については、上記でも触れた通りです。
個人再生するメリット1:弁護士が債権者に送付する受任通知とは?どんな効力がある?
弁護士が債権者に送る受任通知には、
あなた代理人として、弁護士が介入したことを知らせます。
そして、同時に債務整理を開始することを伝えます。
この受任通知を債権者に送ると、
債権者は、直接あなたに取り立てをすることができなくなります。
よって、受任通知送付後は、返済の請求や督促の電話がかかってくることもなくなるので、穏やかに過ごすことができるようになります。
裁判所で決定されるまで、返済が一旦止まることは大きなメリットと言えるでしょう。
個人再生するメリットその2:債権者からの強制執行停止とは?
支払いを滞納し続けると、あなたの預金口座や給料を差し押さえられたりすることがあります。
それを強制執行と言います。
しかし、個人再生の手続きを始めると、債権者は、強制執行の効力が持てなくなるので、あなたの預金口座も給料も差し押さえられることはなくなります。
すでに強制執行を受けている場合は、停止してもらう申立てをします。
強制執行が解除されたり、取立てが無くなったからと言って、自由にお金を使えるようになる!とは誤解しないでくださいね。
あくまでも、借金の見直しと、あなたの支払い能力を整理するための時間です。
個人再生するメリットその3:借金を大幅に減額できる最大の条件は「財産の価値がないこと」
個人再生の魅力は、借金総額を大幅に減額できることです。
もともと、最初に借金の金額に応じて、最低弁済額というものが決まっています。
500万円までの借金は、100万円が最低弁済額。
500万円~1,500万円までの借金は、5分の1が最低弁済額といった基準があります。
この「最低弁済額」というものは、その名の通り「最低限支払う必要のある借金」のことです。
500万円までの借金を持っている人が「100万円」の借金へと減額してもらうためには、清算価値と呼ばれる財産が少ないことが条件です。
この清算価値というものは、
「もしも、お金に換えて処分したら、いくらになるのか?」
という査定額のことを言います。
この査定額が多くなれば「最低弁済額」が上がることになるので、資産をたくさん持っている人は、個人再生をする意味がなくなります。
あくまでも、売ったとしたらいくらになるか…を見ます。
その価値を「減額対象としない」としているのです。
詳しくは↓
個人再生するメリットその4:職業制限はないが収入の安定は必要
自己破産では、職業の資格制限があります。
例えば、士業や保険外交員、警備員などの職に就いている人は、自己破産をすることができません。
ですが、個人再生では、そのような制限はないので、どんな職業の人でも手続きは可能です。
しかし、減額された借金を返済していく必要があるため、収入の安定がなければ手続きすることができません。
何らかの収入が定期的に入ってくる状況であれば、手続きは可能です。
個人再生するメリットその5:借金の理由に制限がない
個人再生と自己破産は、裁判所に申立てを行う手続きです。
自己破産では、借金の理由によっては、免責不許可事由に該当することになるので、借金の帳消しをしてもらえない場合があります。
一方、個人再生では、借金の理由は聞かれますが、それによって、許可が下りないということはありません。
浪費やギャンブル、投資が原因の借金であっても、個人再生をすることに問題はないということです。
個人再生するメリットその6:家や車を残せる場合がある
個人再生では、家や車を残せる場合があります。
もちろん、それなりの条件はついてきます。
家を残せる場合には、住宅資金特別条項という制度が使える要件を満たしていなければなりません。
詳しくは↓
車を残せる場合には、ちょっと複雑な要件があります。
詳しくは↓
詳しくは、それぞれ別の記事を参考にしてください。
では、次にデメリットをお話します。
個人再生する7つのデメリットとは?
ちょっと、デメリットの方は複雑かもしれません。
- 手続きが複雑なこと
- 信用情報機関に登録され、ブラックリストに載ること
- 個人再生をしたことが官報に載ってしまうこと
- 返済中の車等は処分の対象になること
- 安定した収入が必要
- 連帯保証人に請求されてしまうこと
個人再生をするデメリットその1:手続きが複雑
個人でやろうとすると、とても複雑なので、代理人となる弁護士に依頼する方が楽に進めていくことができます。
弁護士に依頼することになれば、依頼費用がかかるので、デメリットと言えるかもしれません。
※司法書士に依頼する場合は、再生委員が必ず選任されることになるので、司法書士の依頼費用+予納金(約20万円)がかかることになります。
ですが、弁護士に任せきりにはできません。
裁判所に申立てる書類の準備をしていただく必要があります。
その中でも、依頼者の方が大変になるのは、家計収支表をつけるという作業です。
これまで、家計簿をつける習慣のある人なら苦労はしませんが、これまで家計簿をつけたことのない人がつけるとなると大変です。
まず、添付資料と、2ヶ月分の家計収支表が完成してから、裁判所に申立てることができるようになります。
この資料と家計収支表の準備に手間取り、手続き期間が延びていく方が多いです。
個人再生をするデメリットその2:ブラックリストに登録される
信用情報機関に事故情報として登録されることになるので、10年ほど(完済から5年)は、ブラックリストとして登録されてしまいます。
その期間は、新たなローンや借入もできないので、困ることもあるかもしれません。
特に気を付けていただきたいのが、スマホの割賦契約もできなくなります。
スマホの割賦契約を借金という認識ができていない人も多いものです。
個人再生をするデメリットその3:官報に掲載される
官報とは
内閣府が発行するもので、この中の公告(裁判所公告)というところに、あなたの住所、氏名、裁判所の手続き内容が記載されることになります。
ただ、誰でも読むことができますが、誰でも毎日目を通すというようなものではないため、載っても大きなデメリットがあるとは言えないでしょう。
ですが、仕事柄、官報を読むという職業もあるため(金融会社等)その場合は、個人再生した事実を知られてしまう可能性があります。
会社にバレるかを気にされている場合は、会社から借入があるか、ないかに重きをおいてください。
会社に借り入れがある場合は、個人再生をすることが会社にバレます。
個人再生をするデメリットその4:返済中の車は処分される
手続きの簡単さから、ディーラーローン、残価設定型ローン契約を組まれている人は多いです。
ですが、その場合は、所有権が自分にはありません。
自分に所有権のないものは、車だけに限らず、ローン会社の判断で没収される可能性があります。
ですが、マイカーローンの場合は、車の所有権が自分にあるので、没収されることはありません。
この違いは大きいので覚えておいてください。
個人再生をするデメリットその5:安定した収入が必要
個人再生をするメリットその4で書いたことと重複します。
個人再生では、毎月の弁済額を支払うために安定した収入が必要となります。
個人再生の手続きをすることができない人
- 主夫・主婦
- 生活保護受給者
- 継続見込や再就労の見込みの立てられない職業の人
ここに該当する人は、個人再生という手段が使えませんので、別の債務整理を検討する必要があります。
また、生活費の中から実際に弁済していけるかを裁判所はチェックします。
これを履行テストと言います。
履行テストでは、毎月4万円~の積立金をしていくことになります。
(借金総額に応じて積立金の額は変動します。)
ご依頼者様は、手続き上必要な履行テストをこなせば、それが弁護士費用に充当されるので、大変好評いただいております。
個人再生をするデメリットその6:連帯保証人に一括請求される
奨学金、住宅ローンや車のローンなどの高額なローン契約をする時には、連帯保証人が必要なことがあります。
主契約者が支払えなくなった時に、代わりに請求されてしまう人が連帯保証人です。
それは、個人再生の手続きをする上でも同じです。
主契約者であるあなたが支払えないとなると、連帯保証人は、一括請求を受けることになります。
実際は、債権者との話し合いで、分割になることが多いです。
個人再生をするデメリットその7:利用条件
個人再生の手続きの利用条件には、借金総額が5,000万円以下でなければいけません。
住宅ローンについては、住宅資金特別条項が使える場合は、借金総額に住宅ローンを含みません。
住宅ローンは、そのまま支払い続け、個人再生の手続きで決定された返済額をプラスして支払っていくことになります。
住宅ローンを支払い続けることが可能であれば、個人再生をするメリットとなりますが、住宅ローン以外の借金の圧縮をしても、住宅ローンの支払いが困難になる場合には、個人再生を選択する意味がなくなります。
また、住宅資金特別条項に該当しない場合には、住宅を手放すことになるのでお気を付けください。
【まとめ】個人再生の手続きは複雑だからこそ、弁護士の助言が大切
どんな手続きも一人でやれないわけではありませんが、法律ごとというのは、複雑なものが多いです。
個人的なことで言えば、その書類要るの?と思うものも時にはあります。
あなたの借金総額が大幅に減額されること、住宅や車に対して柔軟であることからすると、任意整理では追い付かない借金の減額、そして、手放したくない財産がある場合には、個人再生の手続きは、とても向いていると思います。
債務整理を行うだけで、信用情報機関に登録されてしまうのは、痛手かもしれませんが、ブラックリストに対して危惧することよりも、明日の笑顔を大切にしてほしいです。
最後に、相談する弁護士のポイント
- あなたの近くに住んでいる弁護士
- 債務整理を専門に扱っている弁護士
- 弁護士費用が明確でわかりやすい弁護士
- あなたが打ち明けやすい弁護士
この点を覚えておいてくださいね。
<個人再生をお考えの方へ>