「自己破産したら、もう商売は続けられない」という大きな誤解
借金がどうしても返せなくなり、自己破産を考えている。でも、自分が営んでいるこの店や商売だけは、なんとかして続けられないだろうか…
自営業や個人事業主の方が自己破産を検討するとき、最も恐れるのが「破産=即廃業、お店も商売道具もすべて取り上げられてしまう」というイメージではないでしょうか。長年育ててきた仕事や、なじみのお客さんとのつながりを失うことは、人生の生きがいを失うに等しい苦痛です。
しかし、結論から申し上げます。
自己破産をする自営業者が、必ずしも廃業しなければならないわけではありません。
あなたが自己破産をしても、廃業しなくて済むのには「4つの条件」があります。
- 自営業をしている場所が、自宅兼店舗の賃貸であること
- お金に換えられるような財産がないこと
- 商売に借金がないこと
- 他に従業員がいないこと
これらの条件をクリアしていれば、自己破産をしても、店も商売も手放すことなく、そのまま営業を継続できるケースが存在します。
今回は、この4つの条件について、アーク法律事務所の弁護士鬼頭が分かりやすく解説します。
【事例】自己破産したのに、お店を1日も休まず続けられた「おばちゃん」の話
まずは、この4つの条件に当てはまる分かりやすいモデルケース(※実際の事例をベースにした架空のお話です)をご紹介します。ご自身の状況と照らし合わせながら読んでみてください。
人のいい「おばちゃん」の一杯飲み屋の事例
自宅を兼ねた古い賃貸店舗で、こじんまりとした「一杯飲み屋」を1人で営んでいるおばちゃんがいました。お店は順調に黒字で、常連さんにも愛され、細々と食べていくには十分な利益が出ていました。
しかしある日、人のいいおばちゃんは知人の保証人になってしまい、その知人が夜逃げ。おばちゃんの手元には、自力では到底払いきれない「莫大な保証債務(連帯保証人としての借金)」が残され、自己破産を余儀なくされてしまいました。
「これで長年やってきたお気に入りのお店も取り上げられ、廃業するしかない……」とおばちゃんは絶望していました。
しかし、弁護士が詳しく状況を聞き、自己破産した結果…
おばちゃんは自己破産をしても、1日もお店を休むことなく、そのまま一杯飲み屋の商売を続けることができたのです。
一体なぜ、そんなことが可能だったのでしょうか?
なぜ?お店を続けられた4つの理由
おばちゃんが店を取り上げられずに済んだ理由は、最初に挙げた4つのルールをクリアしていたからです。
なぜこの条件なら商売を続けられるのか、その理由を紐解いていきましょう。
① 自営業をしている場所が、自宅兼店舗の賃貸であること
自己破産で処分(換価)されるのは、あくまで「破産者本人の持ち家や土地などの不動産」です。
おばちゃんのお店兼自宅は「賃貸(借り物)」でした。
自己破産をしても、家賃さえしっかり払い続けていれば、裁判所や大家さんから賃貸借契約を一方的に解除されることは原則ありません。
つまり、お店という「場所」は守ることができました。
② お金に換えられるような財産がないこと
自己破産をしても、1つあたり20万円を超えるような価値のある財産でなければ、裁判所に処分されることはありません(これらを「自由財産」と呼びます)。
おばちゃんのお店は古く、調理器具やイス、テーブルなどの什器・備品はすべて中古で、売ってもお金にならないものばかりでした。
また、置いてあるお酒のほとんどは常連さんの「キープボトル(他人の財産)」であり、お店が所有するお酒は数千円程度の価値しかありませんでした。
結果として、差し押さえるべき事業用財産がなかったため、店内のものはすべてそのまま残りました。
③ 他に従業員がいないこと
おばちゃんが1人で切り盛りしている店だったため、従業員はいませんでした。
もし従業員を雇っていて給料の未払い(労働債権)がある場合、手続きは非常に複雑になりますが、1人きりのスモールビジネスだったため、そのようなトラブルも一切ありませんでした。
④ 商売に借金がないこと
これが非常に重要なポイントです。
おばちゃんが破産に追い込まれた原因は、お店の売上不振ではなく、あくまで「他人の連帯保証人になってしまったこと」です。
仕入れはすべて現金払いで、ツケ(買掛金)もありませんでした。
お店自体の経営は健全で、おばちゃんが食べていけるだけの売上があったため、破産手続き中も, 日々の生活費や店舗の維持費(家賃や水道光熱費)を問題なく支払い、営業を継続することができたのです。
まとめ|あなたの大切なお店や技術を守るために
「自営業だから破産=即廃業だ」とひとりで頭を抱えて、長年守ってきたお店や生活の糧を諦めてしまうのは、あまりにももったいないことです。
もう一度、あなたがお店を継続できる「4つの条件」をおさらいしましょう。
- 自営業をしている場所が、自宅兼店舗の賃貸であること
- お金に換えられるような財産がないこと
- 商売に借金がないこと
- 他に従業員がいないこと
もちろん、売上の低迷による事業資金の借り入れが原因の場合や、ローンが残る高額な業務用機械がある場合などは、別の作戦(事業譲渡や個人再生など)が必要になります。
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